コンパートメント症候群
(病態)
下腿には骨、筋膜、骨間膜、筋間中隔などに囲まれた4つのコンパートメント(筋区画)が存在します。
前部区画(前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋からなる)
外側区画(長腓骨筋、短腓骨筋からなる)
浅後部区画(腓腹筋、ヒラメ筋からなる)
深後部区画(後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋からなる)
この各筋区画ないには筋のほかに神経、血管が存在し、各組織を栄養する毛細血管は20~30mmHgの圧力をもって流れているため、打撲、骨折などによりコンパートメント内部の圧上昇が30mmHgを超えると最小動脈が閉塞するため筋肉や神経の阻血障害が起こります。
急性型では痛みが非常に強く、急性・慢性型ともに前部区画での発生が多いです。
(発生機序)
急性型では骨折、打撲に伴い発症し、放置すると非可逆的となり、早急に対応しないと筋が壊死してしまうため、筋膜切開が必要となります。急性型は腫脹により知覚麻痺、激しい疼痛を伴い自動運動が不能となり、通常の鎮痛薬は全く効果がないとされます。
慢性型では、スポーツ活動により発症し数分から10数分の安静により軽快します。慢性型はランニングなどで下腿の疼痛、足が上がらない、筋肉が硬くなる、しびれを伴うなどの症状が出現します。
(診断)
外観上は腫脹により、皮膚に光沢が現れピンク色になります。
徒手的検査として、触診が重要で筋腹全体の硬結を触れることや、 圧痛以外に他動的に患部の筋を伸展すると強い疼痛が誘発されます。
足背動脈の触知を確認し、急性型の場合、初期では細動脈レベルの問題であるため触知可能です。
また、コンパートメント内圧測定なども有用な検査方法とされています。
(治療)
慢性型では保存療法が可能でその際のアイシング、アイスマッサージを行い炎症症状を緩和させ、ストレッチや患部周囲のマッサージを行い緊張の緩和を図ります。
急性型の場合では観血療法として筋膜切開が行われます。
急性型ではアイシング等、冷やすといった行為は血流の阻害を増悪させてしまったり、直近の外気圧が陰圧だとコンパートメント内圧が高まるため望まれません。