手関節部に痛みをきたす傷害
手関節部のトラブルには突発的に起こる急性のものや組織に度重なるストレスがかかり起こる障害と様々なトラブルがあります。
手根不安定症
病態
手根骨をつなぐ靭帯が外傷後に断裂、弛緩し手根骨の解剖学的配列が崩れ症状の出現した状態をさします。
発生機転
手関節の靭帯弛緩や断裂に起因する靭帯由来の不安定症が多く、手関節の捻挫後に生じる頑固な慢性的疼痛と握力低下、可動域制限などで特異的な症状はありませんが、まれに運動時のクリック発生とともに脱力、不安定感などを訴えます。
診断
疼痛の部位や誘発肢位、圧痛の部位を聴取しもともとの全身の関節弛緩性の確認することが重要です。
圧痛部位の局在がもっとも有効な診断手段で、徒手的に手関節を動かす誘発検査にて疼痛や不安定性、クリックの有無を調べます。
スキャフォイド シフトテストと呼ばれる徒手的検査では舟状骨と月状骨間の離開の診断に有用で陽性の場合、疼痛やクリックが誘発されます。
治療
基本的には、サポーターやバンテージによる固定や関節のサポートなど保存療法が推奨されますが、陳旧例の場合には手術療法の適応となることがあります。
オカルト ガングリオン
病態
ガングリオンは関節包から発生する粘液を主体とした腫瘤とされており、特に外傷後の手関節背側のガングリオンは無痛性の腫瘤が増大して気づかれることがほとんどです。
小さなガングリオンでは腫瘤を触知せず手関節の慢性背部痛などの症状を訴え、オカルトガングリオンと呼ばれ診断も容易ではありません。
疼痛の原因には腫瘤が伸筋支帯や後骨間神経の分枝を圧迫することで生じるとされています。
診断
手背に限局した圧痛があり、X線像で異常が認められない場合には本症を念頭に置きます。確定診断には、穿刺による粘膜の観察が必要とされ、本症では腫瘤が小さく穿刺が不可能なこともあり、その場合、超音波検査が有効となります。
治療
穿刺を行い、再発を繰り返す場合には切除が必要になります。
ドケルバン病
手関節背側第1コンパートメント内を通過する短母指伸筋腱、長母指外転筋腱の狭窄性腱鞘炎で、中年以降の女性や周産期の女性に多発する慢性炎症です。
母指使用時の橈側の痛みであり、診断のポイントは背側第1コンパートメント(筋区画)に腫脹、圧痛を認め、徒手的検査であるファンケルシュタインテストが陽性になることが多くあります。
治療は患部へのコラーゲン注射や超音波などの物理療法、テーピングなどによる患部のほごといった保存療法が原則となります。
改善が見られない場合は手術療法の適応となります。